「徹底的に黙って傾聴しろ」といわれた管理職のコミュニケーションとは?
以前、管理職昇格のためのトレーニングを受けました。
といっても、 私の会社では大手企業のように昇進試験があるわけでもなく、上司とのOJTのなかで進められていくのですが、それでもなかなかに鍛えられるトレーニングです。
直属の上司とも長い付き合いで、ざっくばらんに話しつつも部下をもつための「聞き役」というポジションを任されたのですが、悪戦苦闘中。
聞けばいいんでしょ?
簡単じゃん!
と思ったあなた!
どうやらそれは違うようなのです!
「傾聴する」ための3つの約束
私のポジションで今任された最大にして最強のタスクは「傾聴する」ということ。
メンバーの意見を正確に、たくさん収集して、マネージャーに伝えるという役割です。
この役割について、現マネージャーから3つの約束ごとが課されました。
①自分のことは話さない
②正確に聞く
③深掘りする
思いのまま話していたこれまでと違い「だまる」というスキルが必要になってきます。
私に課せられた役割は「聴くこと」であって、話していいのは以下の3つだと…!
*感嘆詞: 「おぉ!」「えぇ〜!」「いいね〜!」「そうなんだ〜!」
*形容詞: 「すごい!」「すてき!」
*質問: 「なぜ?」「それから?」
どこかで見たことある…と思ったらひな壇芸人ってこんな感じでは?!
自分が主役の話はせず、周りの話を引き立てることに徹しています。
傾聴力とは「だまる技術だ!」
学術的には違うかもしれませんが、現マネージャーから特に重要だと言われたのはこれです。
コミュニケーションスキルをあげる際、「うまく話すこと」を重要視してしまいがちですが、最初の一歩は「聴くこと」だと強く言われました。
会社で見る光景 のひとつとして
「昔の時代は…」
「僕が若い頃は…」
などと、昔の武勇伝語りをしてしまう人が少なくないですが、これは『管理職』というポジションが生んだ責任感がおかしな方向へ向いたのだ、と先輩はせつなげに言います。
特に、自分よりも社歴の若い後輩たちを相手にすることで、どうしてもアドバイス調になってしまいがちなことは、私にも身に覚えがあります。
例えば、「会社の人とコミュニケーションが取りづらい」という後輩がいたとしたら、
「周りの人から攻めたら?」などと、おせっかい心から親切のつもりで解決策を言おうとしてしまいがちです。
でも、聞き役の私の役目は情報を聞き切ることなので、アドバイスは絶対しません。
その理由は2つ。
*意見を押し付けてしまうリスクがある
自分よりも経験値のある先輩からアドバイスをもらうと、それが正解だと思ってしまいませんか?
もちろん、疑問を持つことはあるかもしれませんが、自分の中に解決策を見出していない状態では、そのまま受け止めてしまうことが多いように思います。
自信がないとなおさらです。
もし仮に、自分の中でなんとなく思っていたこと・考えていたことがあったとしても、アドバイスをしてしまうことで、その思い・考えは外に出てこなくなってしまうのです。
*悩みの種を奪ってしまう
人は考え、行動し、結果を得ることで成長します。
あっさりアドバイスをしてしまうと、悩み、考える機会を奪ってしまうことになりかねません。
やってはいけない失敗・やる必要のない失敗に向かっている場合は、事前にアドバイスをすることも必要ですが、緊急事態でないとき・余裕があるときには、成長の機会を奪ってしまわないよう注意が必要です。
ただ、思ってしまうんですよ。
あーすればいいのに、こうすればいいのに、と自分の経験値からくる解決策が頭にいくつも浮かびます。
可愛い子には旅をさせよ、なんて言いますが、こちらも鬼ではありません。
いくらだまっていろ、と言われても、やっぱり必要なアドバイスはしたいと思うものです。
だまっているだけでは傾聴にはならない
「だまる」スキルは必要ですが、ただだまっているだけでは意味がありません。
それなら独り言でもいいですし、なんならSiriに話しかけた方が面白回答もあって有意義かもしれません。
私が現マネージャーに課された約束は
①自分のことは話さない
②正確に聞く
③深掘りする
の3つです。
だまっているだけではなく、正確に聞き取り、相手が自ら考えることができるよう「深堀りする」のです。
そのときに活躍するのが
「なぜ?」「それから?」
という質問です。
みなさんも誰かに質問をされたり、話を引き出してもらったりする中で、自分でも気付いていなかった思いに気付いたり、なんとなく思っていたことが整理されたりした経験はきっとあると思います。
それもまた傾聴力なのです。
質問などにより深堀をするときには、それまでの話を正確に聞いておく必要があります。
正しく聞いていなかったら、とんちんかんな投げかけをしてしまいかねません。
だまって聞いたあとの対応こそ、先輩としての本領発揮です!
経験値が豊富な人ほど「だまる」に徹することが大切
以上のように、「傾聴力」を身につけることが管理としてのコミュニケーションの第一歩です。
①自分のことは話さない
②正確に聞く
③深掘りする
この全てが大切ですが、とにかくまずは「自分のことは話さない=だまる」ことからはじまります。
ただ、経験豊富な人ほど、この「だまる」ということが案外難しいのかもしれません。
だって、経験値があるがゆえに、すぐにその問題に対する課題や解決策が見えるのですから。
でも、安易にアドバイスをすることが必ずしも良い方法とは限りません。
だから、経験値が豊富な人ほど、とにかく「だまる」に徹するのです!
私もいろんな思いが錯綜しながら、「だまる」に徹することを意識しながら日々修行中です。
きっとこの「だまる技術」を身につければさらに成長した自分に出会えると思うとワクワクします。
これから管理職になるみなさん、一緒にがんばりましょう。