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階級の「におい」は偽れないという絶望的な映画『パラサイト』の感想。

2020年のアカデミー賞で、史上初めて韓国映画がノミネートされたことで話題になりました。

みなさんはご覧になりましたか? 

 

世間の評判も後押しになり映画館に足を運びましたが、とにかく最後は絶望感が残りました。後味が悪い…。

パラサイトの感想をつづりつつ、絶望感の正体を書いていきたいと思います。

 

※映画のネタバレが含まれますのでご注意ください。

 

韓国の格差社会の闇がつまった風刺映画・パラサイトが絶望感をかもす理由。

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出典:http://www.parasite-mv.jp/

映画『パラサイト 半地下の家族』は、タイトル通り一家そろって失業中の家族が、セレブ一家に寄生(パラサイト)を画策するところから始まります。

 

<キャスト>

  • キム・ギテ・・・たくましい半地下家族の大黒柱。ドライバーとして潜入。
  • キム・チュンスク・・・元ハンマー投げメダリスト。ギテクの妻で家政婦として潜入。
  • キム・ギウ・・・大学入試に失敗し続ける。家庭教師としてパク一家に最初に潜入。
  • キム・ギジョン・・・プロ並みのデザインのスキルを持つ。美術セラピストとして潜入。
  • パク・ドンイク・・・IT企業の社長。大豪邸の主。
  • パク・ヨンギョ・・・若くて美しいパク社長の妻。
  • パク・ダヘ・・・パク社長の娘。家庭教師の気を引きたいお年頃。
  • パク・ダソン・・・パク社長の息子。いたずら盛りのインディアン好き。
  • ムングァン・・・パク一家に信頼される家政婦。キム一家の策略で追い出される。

この映画では、韓国社会の身分差が、

 高台に住むセレブ・パク一家

 低地の半地下にすむキム一家

と住んでいる場所でも高低差がはっきりと描かれています。 

半地下に住む家族たちが、知恵を駆使して憧れの豪邸に入り込みますが、その身分差は絶対的に埋めることができない、絶望的な結末を迎えます。

絶望感を醸す描写を抜粋して、この映画の感想をつづっていきます。

 

超有能な無職家族に漂う”地下のにおい”

大豪邸に住むパク一家に、キム一家がパラサイトしていく中盤までのストーリーは、とてもコミカルに描かれています。

 

キム一家の長男・ギウが、ひょんなことから家庭教師としてパク一家に入り込んだことを皮切りに、妹ギジョンを「美術セラピスト」として連れ込みます。

さらには、すでに従事している「ドライバー」を追い出し父ギテクが、「家政婦」を追い出し母チュンスクが入り込み、キム一家全員が、パク一家にパラサイトすることに成功します。

とんとん拍子に家族全員が潜入していく展開は痛快でもあり、クスッと笑えるシーンも多いです。

 

彼らはとても優秀な人材で、それぞれの役割を問題なくこなせるスキルをもっているにも関わらず、一家全員が無職です。韓国の情勢では、貧困な家庭に生まれてしまったら、そう簡単に逆転できるものではないのでしょう。

 

上位階級をうらやみ、寄生して生きるというのが韓国社会のルールでの処世術なのかもしれません。そのような状況下でも、悲観さは見せずに、パラサイトを当然としてセレブ一家に取り付いてしまうのが、面白みでもあり、怖くもあります。

 

ですが、パラサイトに成功したキム一家も、映画で繰り返し描写されるのは「半地下の住人のにおい」です。

半地下のにおいは、”切り干し大根(韓国だとムマルレンイと言うそう)”にたとえられていましたが、庶民のにおいの象徴なのでしょう。

 

どれだけギテクが有能でも、半地下のにおいを嫌うパク社長と、自分から漂うにおいを気にするギテクの間には、決して超えられない階級の差が醸し出されていました。

能力があっても階級差は決して超えられないという絶望的で残酷な描写でもありました。

 

パラサイトの大きすぎる代償

キム一家がパク一家に入り込んだところまではよかったのですが、ここからさらに衝撃の展開が待ち受けていました。

パク一家の豪邸で長年従事していた家政婦・ムングァンを追い出し、キム一家全員がパラサイトに成功したと思った矢先のこと。

パク一家の留守中に豪邸で好き放題するキム一家のもとへ、ムングァンが現れます。

 

ムングァンの再登場を機に、豪邸に秘密の地下室があることや、すでにムングァンと夫が寄生していたことを知ります。

それぞれの平穏な生活を守るため対立に発展するキム一家とムングァン夫婦でしたが、結果的にチュンスクがムングァンを地下へ蹴り落として絶命させてしまいます。

 

それに怒ったムングァンの夫が、復讐をしていくところから、怒涛の展開を迎えます。

それは、パク一家の息子・ダソンの誕生日。

パク一家がパーティーをしているすきに、ムングァン夫婦の様子を見るため、ギウが地下を訪れます。しかし、すでに絶命しているムングァンを横目に、ムングァン夫に逆襲されてしまいます。

 

ギウを石で殴打して地上へ出たムングァン夫は、長いナイフを手に持ち、パーティーの合間を抜け、ギジョンを切りつけます。妻の復讐という意味もあるでしょうが、自分たちの生活を脅かしたキム一家への報復だったのでしょう。

 

急な惨劇のなか、逃げ惑うセレブ達。

パク社長はギテクに「車のカギをよこせ!」と命じます。鍵は倒れた夫のそばに落ち、拾い上げようとするパク社長が、地下に住んでいた夫の”におい”を嫌悪するような描写が。

それが引き金となって、今度はギテクがパク社長を刺してしまいます。

 

なぜここで、、、と思うのですが、

「決定的な格差」に対する半地下の住人たちの怒りや憤り、消えないにおいの哀しさが爆発した瞬間だったのかもしれません。

 

パラサイトすることで、つかの間の甘い汁を吸っていたキム一家でしたが、ギジョンは命を落とし、ギテクは地下へ身を隠すことに。

家族はバラバラにばり、つかの間の幸せのわりに、あまりに大きすぎる代償でした。

 

おわりに

絶望的な展開を迎えたパラサイトですが、キム一家が改心して本当のセレブに成り上がったり、一家つつましくも一緒にいられることが結末では、いくらでも世にあふれたストーリーだったでしょう。

この映画はサクセスストーリーとは程遠い展開で、韓国社会の”闇”を如実に表していたからこそ、世界で評価されたのだと思います。

 

不正を働いたわけでなく、ただ裕福な一家が半地下の一家に壊滅させられ、住処を乗っ取られるというもの、格差社会がうみだす絶望や妬みをあらわしていました。

 

誰も救われることのないストーリーに戦慄し、 明るさのなかに狂気を見た気がしました。

これまでにないショッキングな映画を見たい方にはおすすめの作品です!

 

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